ドローンの飛行許可申請に必要なものは一体何?
さて、いよいよ本題です。
国家資格一等を有していることが必須となる無人航空機(ドローン)の「カテゴリーⅢ」飛行に対し、「カテゴリーⅡ」の飛行許可申請においては確かに民間資格も国家資格も必須ではありません。じゃあ、例えば全くの初心者が飛行許可の申請ができるのか?というと、そうはいきません。
飛行許可を申請するうえで要件とされているもの、それが航空法が定める、次の3項目なのです。
(1)無人航空機の10時間の飛行経歴
(2)航空法関係法令・安全飛行に関する知識
(3)無人航空機の飛行に求められる能力
いずれも国交省航空局の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」に詳細が記されており、気になる方は以下リンク先をご確認ください。
・無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)
・無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)(参考)
要は、民間資格であれ国家資格であれ、持っていれば上記(1)~(3)の要件を満たすだけの十分な飛行訓練・講習を受けていることの証明となるため、少なくとも「カテゴリーII」飛行であれば、問題なく飛行許可申請できるというわけです。
そして、そこに、保有する資格が民間資格か国家資格かによって、どういった資料の提出が求められるのか求められないのか、という話はあくまでも本手続き上の資格に応じての別の話に過ぎず、これを混同することのないよう踏まえておきましょう(民間資格より国家資格の方がいろいろとメリットが大きいのは言うまでもありません。それはおいおい説明してまいります)。
民間資格の措置に関する混乱の発端・経緯
2022年、国交省が次のように発表しました。
『HP掲載講習団体が発行する民間技能認証については、個別の飛行許可・承認申請時の操縦者技能審査のエビデンスとして活用していますが、現時点の想定としては、本年12月5日の3年後(注:つまり2025年12月5日)をもって、その活用を終了します。
(民間技能認証のみを取得している場合は、申請書類の省略が認められない運用に変わります。)』
引用元:国土交通省「よくある質問」(※現在は削除済み!)
この内容を簡単に説明します。
2022年、国交省は、この通りドローンの飛行許可申請時に「民間技能認証(民間資格)」を持っていれば提出を省略できていた2つの書類を(省略を認めないことに変更し)提出させる方針を発表したのです。
これを受けて、つまり、いったん民間資格を持っていてもこの2つの書類を出さなくてはいけなくなったことで、あちこちのドローン関係のホームページやYouTubeなどで、民間資格が「飛行許可申請上の効力を失う」、「無効になる」、「廃止になる」、「飛行許可申請ができなくなる」といったただの勘違いなのか、無責任で勝手な拡大解釈によるものなのか、まるで伝言ゲームのようにいたずらに民間資格の保持者に対し不安を煽るような情報が溢れかえる事態になったのです。
ちなみに大騒ぎの元となった2つの書類とは、国交省の定める最新様式「カテゴリーⅡ飛行(レベル3飛行)申請書(様式)」の中で、以下確認できます。
① 無人航空機を飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書(様式3)
② 無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性資料(参考様式)
①は前項で触れた要件(1)~(3)の3項目に関する内容を記すもの、また②については夜間飛行、目視外飛行、物件投下に関しての操縦者の適否を記載するだけのいずれもごく簡単なもので、第三者による証明書類なども求められず自己申告で記せばOKの、それぞれたかだか1枚程度の簡単な様式となっています。国交省サイト(ドローン情報基盤システム)での申請において入力は1~2分で済むようなものです。
それなのに、この2022年の国交省の変更措置の情報が前述のように大変なことになったと大げさに歪んだ内容に増幅していくかのように国内を駆け巡る事態になってしまったのです。
国交省もこの国内の反応にはさぞ驚いたことでしょう。
2025年3月の制度改正による飛行許可申請手続きの簡素化
以下の今春の国交省発表資料を、特にまだ見ておられない方はぜひご覧いただきたいと思います。
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正について」
混乱をきたしたと言える2022年の民間資格の飛行許可の申請手続き見直しに関する発表の後、本年2025年3月に、新たな展開とも言うべき飛行許可・承認の審査要領の改正が行われました。われわれドローン飛行をする者にとって歓迎すべき飛行許可申請手続きの簡素化の措置が発表・実施されたのです。
その内容については、全体的に飛行許可・承認の申請手続きの簡素化並びに審査の迅速化を図るものとしての制度改正なのですが、ここで焦点を当てている民間資格の場合においても、いったん提出が必要と発表された2つの書類どころか、申請書類一式が提出不要(ただし、具備はしておく必要がありますので、その点は注意は必要です)ということになったのです。
この事実を知り、最初は少々戸惑ってしまいました。飛行許可申請が面倒になるどころか、逆に緩和されたのですから。
また、いい加減な情報が出回ったせいで、民間資格を持っている意味がなくなるとか、民間資格では飛行許可申請ができなくなるとか、惑わされていたであろう民間資格保持者にとって、この緩和措置は実に耳寄りで不安を打ち消してくれるありがたい情報のはずです。
でもあまり情報として出てきませんね。なぜでしょうか・・?
なお、念のためですが、提出せずともこれらの必要書類の具備はしておきなさい、ということですから、前述の各様式を作成しておくべきなのは言うまでもありません。
ともかく、本年3月の国交省によるドローン飛行許可申請手続きに関する制度改正の方針転換を素直に評価したいと思います。
それでは次回は肝心の飛行許可申請を行えるための要件となる10時間の飛行経歴の話を中心に記事にしたいと思います。
